疫学ワークショップ・2
がんの海外学術調査—中国との胃がん共同研究を中心に
青木 國雄
1
,
川井 啓市
2
1名古屋大学医学部予防医学
2京都府立医科大学公衆衛生学
pp.67-71
発行日 1987年1月15日
Published Date 1987/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207411
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●はじめに
がんのかなりの部分は生活環境と密接して発生するので,発がん環境要因を検討する一方法として,生活環境の非常に異なる地域間での比較がある.一国内の異なる地域での比較研究では共通の要因が多いので,できれば相違点の著しい外国との間の比較研究が期待され,それにより発がん関連要因をより容易に検出できると老えられてきた.
1984年来,文部省は海外学術調査の一環としてがん特別調査を新たに設け,アジア各国を中心とする共同研究によって,がん研究を推進するという道を開いた.アジア各国では,すでに特定のがんの多発地区が報告1,2)されており,これらの地域の中には日本に比べ,より単純な生活を長年継続している地域住民が知られている.生活環境と関連する要因は比較研究により,より容易に検出される可能性が高く,その上,こうした住民のがんは,prototypeとでもいうべき特性を示す可能性があるので,発生機序を考える上にも好都合と考えられた.実際にはこういう条件が必ずしもすべて備わるわけではないとしても,得られる知見とわが国のがん特性と比較対比すれば,がんの予防上にも有用な知見が得られることが期待されたからである.
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