衛生公衆衛生学史こぼれ話
35.スノーとポット
北 博正
1
1東京都環境科学研究所
pp.37
発行日 1987年1月15日
Published Date 1987/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207403
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疫学を学ぶとき,最初に登場して来る人物はスノー(John Snow,1813〜1858)とポット(Sir Percival Pott,1713〜1788)の2人の医師であろう.
スノーは1854年のロンドンのコレラ流行時に疫学的手法を用い,コレラが伝染病であること,また水によって媒介されることを認めた.これはコッホ(Robert Koch,1843〜1910)のコレラ菌発見(1883)よりも30年も前のことである.スノーはコレラによる死亡者が発生すると,地図上の該当地点に印をつけていくと,ある特定の井戸の周りに印が集中することを認めた.これはブロード・ストリート(Broad Street)という地区で,ここの共同井戸が問題になった.さらに問題の井戸と隣接の共同井戸間の等距離線を画いてみると,死亡者の大部分が問題の井戸の水を飲んでいることが明ら,かになった.また当時は結婚,出生,死亡等の戸籍は教会に届けられていたが,このコレラ多発地区の属する聖ジェームス(St.James)教区では,1851年の人口が36,406のところ,死亡率は人口10万対220で,他の教区で9〜23であるのと比べると,格段に高率であった.
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