特集 地域における精神保健
地域における精神保健の現状と問題点—和歌山県からの報告
朝井 忠
1,2
Tadashi ASAI
1,2
1和歌山県精神衛生センター
2和歌山県立五稜病院
pp.284-289
発行日 1985年5月15日
Published Date 1985/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207040
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
■はじめに
昨年(昭和59年),わが国の精神医療は,宇都宮病院事件で明け暮れた.厚生省精神衛生課が精神保健課と名称を変えたのも,何か関係があるように思われてしかたがない.また宇都宮病院事件への関心の目先を変えることが目的のようなタイミングで「心の健康づくり」のキャンペーンをはった,昭和59年10月「心の健康づくり運動の推進について」なる資料が,各府県の精神衛生センターにも配布された.それによれば,「近年の社会生活環境の複雑化等に伴いノイローゼ,うつ病,心身症,職場不適応等になる中高年層や思秋期症候群,キッチンドリンカー等に陥る主婦,登校拒否,家庭内暴力等の思春期の情緒障害を有する青少年が増加している.このため地域,職域,学校等のあらゆる場を通じ,それぞれのライフサイクルに応じた国民的な心の健康づくり運動を,関係省庁とともに積極的に推進することにより,国民の精神的健康の保持,増進を図ろうとするものである」.当面実施すべき施策として「地域住民を対象として,精神衛生センターにおいて,心の健康づくり教室を,それぞれ実施する」と記されている.これまでの精神衛生センターを中心とした精神衛生活動と比較して,どこが新しいのかと考えこんでしまう.
マスコミ報道では,宇都宮病院が悪徳病院で,非常に恐ろしい事が起こっていたとされている.確かに,非人道的「病院不祥事」である.このような事件は,どのようなことをしても防がねばならない.
Copyright © 1985, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.