特集 スポーツ医学
スポーツによる循環系の事故とその予防
村山 正博
1
Masahiro MURAYAMA
1
1関東逓信病院
pp.257-262
発行日 1985年4月15日
Published Date 1985/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401207033
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■スポーツによる事故予防に関するスポーツ医学の関与
スポーツはいうまでもなく身体運動であり,身体トレーニングにより諸臓器の機能が向上または修復され,また精神的にも積極的になるというメリットをもっている.諸臓器の機能向上は健康増進や競技者における記録向上に連なり,また機能修復は疾病治療やリハビリテーションの目的に連なることになる.従ってスポーツを行い,また指導する場合,その目的がどこにあるかを十分に認識する必要がある,この二つの目的は運動という共通の手段を用いながら,その考え方に質的に異なった面があることを忘れてはならない.スポーツ中の事故が本来,機能修復の目的にスポーツを行いながら機能向上を指向するために生じていることが少なくない.
学問としての体系は運動生理学,体育科学といった分野は従来,競技力向上のための研究が主流であり,いかにして体力をつけるかという目的のために生理学,生化学などの身体機能に関する学問を利用する分野といっても良かろう.一方,医学の基本的立場は疾病の原因や機序を知り,治療することであろうが,従来の治療法が安静を主体としたものであり,運動を医学の体系の中で考えることは少なかったが,近年,運動が治療の上で欠くべからざるものであることが判ってから,医学の場においても運動が大きな分野を占めるようになってきた.ここに体育科学と医学の接点ができたといって良い.
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