特集 人口問題
最近の人口理論—出生力の経済学を中心に
大淵 寛
1
Hiroshi OHBUCHI
1
1中央大学経済学部
pp.370-374
発行日 1982年6月15日
Published Date 1982/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206530
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わが国の出生率は,1950年代後半から一貫して低い水準を持続してきたが,第1次石油危機(1973年秋)と軌を一にして一段と低落し,1981年にはついに13.0%という統計史上最低の率を記録した.この低下が一時的なもので,近々回復に向かうのか,それともより低水準で安定してしまうのか,日本人口の将来にかかわる重大事だけに,各方面から多くの関心を集めている.また,西ヨーロッパでも現在同じ問題が起こっており,きわめて深刻に受けとめられている.
今日,先進諸国の死亡力はほぼ下限に近づいており,戦争のような異常事が発生しないかぎり,今後も低い安定した水準で推移すると予想される.国際人口移動もそれほど大きくはないので,将来の人口動向はもっぱら出生力の水準変化にかかっている.低開発国でも,死亡力の低下はまだある程度見込めるものの,より重要な要因はやはり出生力である.
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