特集 医学教育と保健所
Finishもなければ,拍手もない
田原 直廣
1
Naohiro TAHARA
1
1京都府衛生部保健予防課
pp.93-95
発行日 1982年2月15日
Published Date 1982/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206473
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中国の古い言葉に,病を治すのは「小医」であり,人を癒すのが「中医」,そして国(社会)を直すのは「大医」であるというのがある.高血圧症を勉強するのに,病理や治療法のみにとらわれて,その人の生育歴や背景にある生活環境,さらには経済状況などを考慮しなければ,単に薬品を与える作業が医療であるという錯覚におちいってしまう.現在の医学教育の中で,そこまで考えさせる講義が行われているのであろうか.ましてや,社会・経済・歴史・習慣などを勘案し,医学教育の中で最も欠落しているといわれる栄養学をはじめ,他の学問を駆使して高血圧症を診る訓練はなされていないと思う.
このような考え方は,単に将来公衆衛生に従事する者だけでなく,病院勤務にしろ開業医になるにしろ必要なことである.地域包括保健医療がさけばれている現在,病院などで患者の来るのを待っていればよいという医者は時代おくれかもしれない.
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