特集 予研30年の歩み—伝染病の推移
序説
福見 秀雄
1
1国立予防衛生研究所
pp.563
発行日 1977年8月15日
Published Date 1977/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401205438
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予研の発足■
国立予防衛生研究所(以下・予研と略称)が発足したのは1947年で,爾来すでに30年の星霜が去来した.太平洋戦争から終戦にかけて社会状態,とくに衛生環境の混乱,それに伴う伝染病の多発の時期から,やがて諸条件の改善にしたがって,遂に現在のような経済大国となり,世界一流の文明国の仲間入りをするようになった.その30年の間に予研は創立され,伝染病の混乱期と戦いながら努力し,発展し,現在に至った.その間における予研の功罪について,ここに回顧し,反省するのも無意味ではないと信ずる.
予研は元来,米軍占領政策の落とし子だなどといわれる.その出生がどうであろうと,それが正しく,かつ必要な目的のために誕生し,発展したのであるならば,別にそのことをとやかく穿さくすることはあるまい.当時の伝染病猖獗の状況から見て,病原微生物学研究の中心となる研究所はまさに必要であったのである.その頃,確かに東京では伝染病研究所,大阪では微生物病研究所があり,それぞれその方面の研究に業績を挙げてはいたが,それらはいずれも大学付置研究所である.厚生行政と直結する業務が関係する場合には,やはり厚生省所管の研究所である必要があったのである.
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