特集 ONLY ONE EARTH
人口の適度論から限界論,そして政策論への転換
黒田 俊夫
1
1厚生省人口問題研究所
pp.161-166
発行日 1973年3月15日
Published Date 1973/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204633
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国連人間環境会議と人口
"人口爆発"という言葉が使われ始めてからもう10年にもなるであろう.一般にはジャーナリスティックな言葉として受取られがちであるが,少し過去にさかのぼって世界人口の増加の経過をみれば今日の増加率がいかにはげしいものであるかが分かるであろう.
キリストの生まれた西暦元年の頃の人類は約3億と推計されている.これが約8億に達したのは1750年である.したがってこの期間の増加率はきわめてかんまんで,年率にすると0.05%あまりにすぎない。今日の世界人口の増加率は2.0%であるから,40倍の速度である.増加は次第に加速し始めてきたわけであるが,それでも今世紀の始めから半ば頃までの50年間はなお年平均増加率はせいぜい1%にすぎなかった.2%になったのは1950年以降であって,いっきよに2倍の増加率にはねあがった.この2%の年増加率がそのまま続くとすると世界人口は35年間で2倍になる.いいかえれば,1970年の世界人口36億3200万が35年後の2005年には75億を超えることになる.また,この増加率が100年間続くとすると世界人口は300億に近いものとなる.今日の増加率が昔から続いていたとすると,今日の人口になるためにはわずか1200年前に地球上にアダムとイブの2人がおればよかったということになり,人類の歴史は1200年ですんだという計算になる.
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