特集 公衆衛生活動の将来像
公衆衛生基本法(大綱)をよんで(2)—実務家の立場から
正岡 和
1
1東京都府中保健所
pp.15-16
発行日 1970年1月15日
Published Date 1970/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401204010
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激動する社会に対応する構想
先頃,経済企画庁から"新全国総合開発計画"が発表され,わが国のこれからの将来20年間における総合的な開発計画構想とその水準とが提示された.構想の内容については,各界から種々の意見が開陳されていることは周知のことである.もちろん,この"新全総"に公衆衛生が重要な課題として取りあげられてはいるが,なにぶんにも全体の中の部分であって,公衆衛生の基本的方向づけについての詳細を欠いている.このような意味において,このたび西川滇八,橋本正己氏らのグループの共同研究によって"公衆衛生基本法"が構成され,試案が提示されたことは,時期的にも,またその必要性の点からも,きわめて有意義な成果といえる.基本法という性質からいって,内容の具体性よりも,むしろ今日の激動する社会において,きたるべき脱工業化社会あるいは情報化社会に向けての,公衆衛生の政策目標とこれを実現するための組織,およびこれの運営についての基本的な大枠の構想である.特に,総合的な目標設定とこれへの計画的,組織的アプローチを重視している点は重要である.戦後から今日までの公衆衛生活動が憲法や,WHO憲章の理念にもかかわらず,どちらかといえば種々の制約によって問題対応的あるいは対症療法的な活動に限定され,主として健康の回復と維持とに努力を集中せざるをえなかった.
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