特集 衛生害虫駆除
蚊とハエのいない生活運動の評価と今後の方向
長崎市における地区組織活動の1例—便池の集団殺蛆事業
大利 茂久
1,2
1長崎市衛生部長
2長崎市中央保健所
pp.361-363
発行日 1964年7月15日
Published Date 1964/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202839
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カ,ハエ及びその他の衛生害虫類の発生源は,公共的なものと私的なものとに分けることができるが,長崎市においては,これらの発生源に対し,環境的或いは薬剤による駆除を行なう場合に,前者に対しては市の手で,後者に対しては各家庭の責任において実施されるべきだとの見解のもとに業務を行なっている。私的発生源は特にハエの場合に多く,その主なものに便池,ゴミ箱(溜)及び畜舎等があげられるが,これらに対して各戸単位に駆除を行なってもその効果が里まれないのは明らかで,どうしても地区の組織活動によって,広範囲にわたって一斉に而もその地区の環境に応じた計画のもとに実施されてはじめてその効果がみられるものである。
長崎市においては昭和27年1月,カ,ハエのいない生活の実践運動を「モデル衛生都市建設事業」と銘打って,本事業に対する市の態勢を整えるかたわら,地区組織活動の育成助長につとめてきている。本事業の推進母体である地区組織の活動には多分に政治性をおびてはいるが,その目的である,カ,ハエの撲滅は科学的に進めなければその成果も永続性も期待できないところから,長崎市では,本事業を始めた当初より,保健所内に衛生害虫研究室を設け,衛生害虫類の実験的並びに実際的撲滅研究を行ない,それぞれの発生に対する経済的かつ効果的な方法を確立すると共に絶えずその効果の判定と改善につとめてきた。
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