特集 地域開発と住民の健康—(社会医学研究会特別報告)
6.四日市工業地帯—地域開発と社会医学的諸問題
水野 宏
1,2
,
堀田 之
1,2
,
大橋 邦和
1,2
1社会医学研究会中京ブロツク
2名古屋大学公衆衛生学教室
pp.609-612
発行日 1963年11月15日
Published Date 1963/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401202749
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I.はじめに
地域開発に先立って,地域住民の健康がどの程度に重視されているかによって,地域開発の進め方は全く異った道を歩むことになる。地域住民の健康をまもる具体策とは,単に狭い意味での保健福祉施策には止まらない。地域開発に必然的に伴う地域の自然的生物学的諸条件の改変によってもたらされる地域住民の健康への影響が正しく計量され,それに応ずる適当な施策が準備されているかどうか,産業構造・人口構造・都市構造の変化によって生ずる地域社会全体の保健構造と保健機能の激動が,どれだけ適確につかまれているかが問題とされなければならない。
現実には正しい調査結果に基づく長期的な見通しの上に立って進められている地域開発が皆無であることは遺憾であるが,その結果,地域開発の進行につれて地域社会全体の保健機能に必ず大きな破綻を生ずる。保健機能の破綻は,それが社会存在のもっとも基盤的な機能であるだけに,地域社会全体の機造と機能に次第に致命的な影響を与えるようになり,地域社会全体に破綻が及ぶに至る。これをつくろうためには,後になって極めて大きな経済的負担を負わねばならず,しかもそれによってもなおつくろいきれないという事態に至ることは多くの先例がこれを示しているところである。ここでは経済優先がそのまま莫大な不経済をよんでいる。
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