特集 結核問題の焦点
精神衞生の領域—昭和28年6月5日日本国際医学協会第6回例会において
齋藤 千都
,
パウル・ヴイ・レムカウ
pp.19-24
発行日 1953年12月15日
Published Date 1953/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201292
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お手許に差上げました印刷物は,今夕皆様に申し上げたいと考えていることの概要を記したものであります。そのいちいち細かい個々の事項について御説明申し上げるには大変長い時間を要し,到底ここではできないことでありますから,私は,只今皆様がごらんになつている表につきましては,一つ一つに深入りすることなく又どの部分も,特にくわしくない様に,簡単な註釈をつけるという程度にさせて頂きたいと存じます。別表参照
先ず皆様は,その表の右側よりも左側の方に余程多く項目がもられていることにお気ずきのことと存じます。これは,私が精神医学的治療の重要性が少いと考えているのではなく,多くの医師の方々は精神障害の予防よりも治療の方をよりよくご存じでいらつしやるからであります。治療については,今迄に十分考究されてまいりました。患者は一生涯ほとんど治癒しないようにみえるのでありますから,いやでも私共が常に治療の重要性を感じさせられているのであります。そのため,私共の考えが予防にまで及ばないようになつてしもうのであります。誰かがいいましたように,私共は水道の蛇口が開き放しになつている。風呂桶の水をかい出すのに忙しくて蛇口を止める事に考え及ばなかつたのであります。それゆえ,表にあらわされている不均衡は,決して治療の必要性を軽視しているのではなく,予防面を強調しているのであります。
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