特集 最近の性病問題
随想
保健文化賞受賞の感想
酒井 谷平
1
1日本温泉気候学会
pp.39-40
発行日 1953年11月15日
Published Date 1953/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201284
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筆者は先きに第一次大戦後,今から35年前欧洲に遊び,彼の地の温泉を見学したのでありますが,それ等の温泉が我が国に於けるものに比し,質量ともに著しく貧弱であるにも拘らず,規模の宏壮,建築の華麗なるに一驚を喫すると同時に,其の研究,設備の十分に行き届き,自国民ばかりでなく,外国の求厚生省,求療病者から樂しく愉快に利用されているのを見て,羨望の眼をもつて感歎したものであります。以来,我が国の温泉もかくあるべきであるとの信念から,朝野にアツピールして,先ず温泉業者,交通業者を主体とせる社団法人日本温泉協会を,つづいて同好の学者を主体とせる日本温泉気候学会を創立して,著書に講壇に,其の研究の重要性と,設備の改善を高唱し来たのでありましたが,時運の然らしめるところとはいえ,其の研究の進歩,設備の改善と同時に,其の利用が年々共に隆盛に赴き,今は全国に数万戸の温泉旅館を見るばかりでなく,十数カ所の温泉研究所,数カ所の温泉病院,数千カ所の温泉厚生寮が設立され,国民の保健,療病に多大の貢献をなしつつあることは,筆者の頗る欣快とするところであります。尚この上は筆者の多年の願望である国際温泉場が設けられ,世界各国民が厚生療病のため我が温泉を利用するようになれば,私の本懐之れに過ぎないのであります。
此処で今回の保健文化賞受賞を機とし,筆者の温泉医学に貢献せる業績を回顧して見たいと思うのであります。
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