研究報告
小兒期の體温調節—高氣温並びに高熱疾患に對する體熱態度
倉田 正一
1
,
和久井 健三
1
1慶大醫學部衞生學公衆衞生學教室
pp.31-35
発行日 1952年11月15日
Published Date 1952/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401201132
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人體の體温調節に關する研究においても,動物實驗からえられた數多くの重要な論據がある。しかし,人體と動物の間には體温調節の機轉においてその方法論において,大きな開きがあることは勿論である。例えば,熱放散の形式をみても,人體で重要な機轉の一つは皮膚からの水分放散であるが動物では全く事情を異にしている。從つて動物の觀察にもとづく推論をただちに人體にあてはめることは,特に體温調節問題を論ずる場合には愼重でなければならない。勿論,Rodbardが温度に對する血壓の變化を指標として,亀と脊椎動物の温調節中樞を比較しているように1),體温調節の幼稚ないろいろの形を學ぶことは大切である。このような觀點から,あきらかに體温調節能の發達未だ充分ではない小兒の體熱の動きをみてゆくことは,小兒が成人にみられる美事な調節機轉の素朴な形をもつているであろうという意味において,動物實驗と同樣に評價さるべきであり,特に,内分泌腺の活動と關聯してその發達過程を追求することができれば,體温調節の研究に少からぬ助けを與えることができると思われる。
今回は,小兒期のうちでも幼若な乳兒が,夏季高氣温に遭遇したときに如何なる體熱變化を示すか,又,體温調節未熟なりといわれる小兒期では,高熱疾患時にいかなる體熱變化を示すかを觀察し,高熱に對する調節能について考按した。
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