論述
血液金庫の創設
宮本 正治
1
1血漿研究所
pp.231-234
発行日 1949年2月25日
Published Date 1949/2/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200428
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身に覺えのない一婦人が,大學病院で輸血した際梅毒に感染したことから,が俄然社會問題となり世間の冷嚴なる批評をあびせかけられたわれわれ醫人は,かねてより輸血文化の向上を絶叫しながらも終に今日まで無策に終つたことは眞に殘念であるが,この機會に從來のわが國輸血施設の缺陷を補い,再びかゝる禍を繰返さない樣にいたしたいものである。この病氣が人に知られたくないためにこれまではごく内密に處理されていたことはこの事件によつて相つぐ輸血性病患者が名乘をあげていることでも明であり,私共が事件直前東京都内の職業給血者883名に就て血液檢査を行つた結果34名の陽性者を發見したことによつてもその被害は決して少くないものと想像される。なにしろ輸血は緊急を要する場合が多いのは,われわれ專門家にとつても必要な試薬を入手するのに多大の労苦を要する現状にあつては一般醫家の醫療施設の完璧を今早急に望むことは甚々困難が伴うので,寧ろ輸血施設の社會化を計り日常近所の藥局からビタミン劑と治療血清を取り寄せて患者に與えるのと同じ氣安さで血液金庫から血液を取り寄せて輸血が出來る樣になれば眞に幸である。
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