論述
空氣傳染性疾患防遏方法の一つとしての床及び寝具の油劑處理方法に就て
尾崎 嘉篤
pp.259-262
発行日 1947年10月25日
Published Date 1947/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200195
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吾々は傳染病のうち,消化器系傳染病とか,鼠族や昆蟲によつて媒介せられる傳染病は,一應之を防遏する手段と方法とを心得,事實又その防遏に成功もしてゐる次第であるが,空氣によつて媒介せられる傳染病となると甚だ心もとないことを告白せねばならない次第である。だゞ吾々の之までなし得たことは,患者を隔離してそれとの接觸を斷つことと,その居室は窓を開放して,危險な病原體を含む空氣は外氣と入れかへ,無限大の自然の稀釋力にたよること,また,患者とやむおえず接觸する人―その他の人もであるが―はマスクを使用するという程度の,極めて消極的な,しかも自信のもてない手段が考へられる位である。この他昔から行はれた消毒劑による空氣の消毒もあるが,どの程度信を置いてよいものか判らず,近頃は殆んど實施せられない次第であつた。
ところが戰後アメリカより傳へられる所によると,油劑を用ひて床や寝具を處理して,空氣傅染を防止し,更に進んで空氣自身中に浮游してゐる病原體も,同樣に油劑を用いて捕捉して了はうとの方法が實施されてゐるとのことで甚だ興味を持つて待つてゐた次第であつた。たまたまTheAmerican Journal of Hygieneに數篇のこの關係の文獻がのつてゐたからその概要をまとめて記し,御紹介致したい。
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