論説
W.H.O(世界衞生機關)
野邊地 慶三
pp.289-290
発行日 1947年1月25日
Published Date 1947/1/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401200092
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1918年歐洲の空を蔽ふて居つた第一次世界戰爭の硝煙が晴れて,ヴエルサイユ宮殿で平和會議が行はれた時,理想主義者Wilsou米國大統領は國際連盟の創設を提唱し,各國代表の讃同を得てその實現を見たのであつた。それは國際紛爭を永遠に地上から放逐することを目的とするものであつた。然しこの國際連盟の第一義的目的を擔當する政治部の事業は,我國からその部員として參劃しておられたが故新渡邊稻造先生などが始終嘆いて居られたやうに不成績で,國際紛爭は連盟の中裁では解決されるものが少なかつた。然るに連盟としは第二義的であつた衛生部の事業はロツクフエラー財團の經濟的支援の御蔭もあつたが,非常な好成績で傳染病豫防に向つて國際的協力,血清,ワクチン其他の生物學的製劑の國際單位の制定,公衆衛生上の知見の交換,衛生状態改善の爲めの國際的支援など非常に有意義な功績を擧げて居つだのである。第二次世界戰爭の進展によつて國際連盟は遂に解消するに至つだ時,共の衞生部の事業は僅に國際救濟事業局ANRRAによつて繼承されて來たのであつた。
第二次世界戰爭が止んで,國際連盟と同じ目的で更に強力な國際連合U.N.が先般締盟されだが,昨年6月米國公衆衛生局長Parran氏の提唱によつて『國際衞生會議』がNew York市に開催された。そして1ケ月餘の討議の結果世界衛生憲章が制定され之によつて世界衞生機關W.H.0が設けられることになつた。
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