特集 公衆衛生の原点を学ぶ―イギリスの挑戦
イギリスにおけるソーシャルサービスの発展の歴史
岡田 忠克
1
1関西大学人間健康学部人間健康学科
pp.32-36
発行日 2014年1月15日
Published Date 2014/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102929
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はじめに
イギリスでは,福祉サービス供給のあり方が大きな課題となっている.1980年代以降,先進国に共通する財政の危機的状況は,各国に「小さな政府」論を呼び起こした.とりわけ福祉政策分野においての政策理念の転換は,これまでの福祉国家のあり方を大きく変えるものであったといえる.世界的な潮流としての「福祉多元主義」,「福祉の混合経済」化政策が,福祉政策の根底に位置するようになった.福祉改革と呼ばれる一連の状況の中で国家の役割,公的部門を縮小しようとする政策が実施され,市場原理の導入による効率的な福祉サービスの供給が指向され,現在に至っている.
本稿では,社会サービスの中でもコミュニティケアを中核とする対人福祉サービス(personal social services)の提供に関する政策に限定し議論している.イギリスでのソーシャルサービス(social services)の概念には保健・医療・教育・対人福祉サービスなどが含まれるとされているが,そのうち対人福祉サービスの具体的な展開であるコミュニティケア政策に焦点を当て,特にコミュニティケア改革までの流れと保健政策との関わりについて歴史的背景を考察する.
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