連載 災害を支える公衆衛生ネットワーク~東日本大震災からの復旧,復興に学ぶ・6
「場」づくりを意識した企画調整機能の重要性
佐々木 亮平
1
,
岩室 紳也
2
1日本赤十字秋田看護大学看護学部看護学科
2公益社団法人地域医療振興協会ヘルスプロモーション研究センター
pp.722-726
発行日 2012年9月15日
Published Date 2012/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102529
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だれもが被災者
「被災者」という言葉を聞いて,読者の方はどのような定義をされるだろうか.被災地では家族,親戚,友人,知人,仲間,財産,家,仕事,生活空間を何一つ失わなかった人は一人もいない.この連載でも9人いた陸前高田市の保健師の内6人が犠牲になったことは何度か書いているが,つらい思いでいる一人が,犠牲者たちの元同僚であった佐々木自身である.今現在,岩室は一緒に陸前高田市入りしている佐々木の心中をどう受け止めていいか,わからないままである.佐々木は震災1年前まで被災地で生活をし,陸前高田市(岩手県)退職後も現地の玄米ニギニギ体操自主グループ1)や子育て支援団体を後方支援したり,AIDS事業を陸前高田青年会議所と協働し続け,震災1か月前にも元同僚らと現地で会い,これからの夢や展望などについて熱く,深く語り合っていた.しかし,佐々木は一般的には,被災者と考えられていない.
一方,岩室は陸前高田市で津波を経験しているわけではないにもかかわらず,繰り返し陸前高田市入りしているためか,最近は海抜ゼロメートル地帯で避難先の高台が遠く離れているところにいるだけで,何とも言えない恐怖感にさいなまれている.しかし,それは一般論として誰もが地震や津波を怖がるのと同じではないかと思われている.
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