特集 基礎から学ぶ環境衛生
弱者と衛生害虫―自ら対応が困難な者の実態
矢口 昇
1
1東京都豊島区池袋保健所生活衛生課
pp.456-459
発行日 2011年6月15日
Published Date 2011/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102131
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はじめに
人の健康と安全を損なう有害な昆虫等を衛生害虫と称し,公衆衛生学や衛生行政では,ねずみ族と合わせて「ねずみ・衛生害虫」もしくは,「そ族昆虫等」と表す場合が多い.
過去においては,感染症を媒介するハエやカ,シラミ,ノミ,ねずみ等がその代表的なものであったが,現在では,その存在が不快であるなどの精神的要素も入り込み,近年では様々な害虫を対象として,地域住民からの相談を保健所等で受けることが多くなってきている.
わが国は,戦後の一時期からすると,下水道の整備や汲み取り便所の水洗化,ゴミ収集運搬・処分等の改善,衛生教育の推進などにより,生活における衛生環境は格段に向上し,併せて有害な害虫も激減してきた.
しかしその一方で,社会状況の変化に伴い,新たな問題が発生してきている.外の人の力を借りなければ自らの生活や自立が困難な,社会的弱者とされる高齢者や子ども・障害者・路上生活者,生活保護を受ける者などを対象とした,ねずみや衛生害虫に関する相談の増加である.
本稿では,このような「ねずみ・衛生害虫」に関わる新たな問題について,実態とともに考察していくこととする.
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