連載 地域づくりのためのメンタルヘルス講座・2
精神保健サービスにうまくアクセスできないのはどのような事情によるのですか?
野口 正行
1
1岡山県精神保健福祉センター
pp.408-411
発行日 2011年5月15日
Published Date 2011/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401102113
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はじめに
厚生労働省の新規事業である,未治療・治療中断者に対する「精神障害者アウトリーチ事業」が平成23年度から始まる予定となり,未治療・治療中断者への支援が最近注目を浴びるようになってきた.これまでこのような事例に関わってきた保健所等の職員はすでに知っているように,このタイプの当事者は医療の必要性が低いから医療に関わっていないのではない.本来は医療を含めた支援の必要性があるにもかかわらず,支援が入っていないのである.さらに言うならば,「サービスの必要性が高いほどサービスが届きにくい」という,いわば逆説的な状況にある1).ある意味では,最も精神保健サービスでの重要な問題であるにもかかわらず,保健所等現場での対応に任せられてきた.医療保健福祉のサービス体制全体において,制度上の対応が十分になされてきたとは言いがたい.今までのサービス体制においては,医療機関につながり得た事例を中心に体制が組まれており,支援につながっていない事例がどれくらい支援を要するのか,そもそもそのような事例数はどれくらいなのかなど,基礎的データすらない状態である.
本稿では,海外の文献なども引用しつつ,精神保健サービスにアクセスできていない事例の疫学的データと,その理由はどのようなものであるのかについて整理してみたい.
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