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はじめに
「がん患者さんへの治療の際に,日本国内で適応の取得された抗がん剤はすべて使ったが,効果はいまひとつである.可能性のありそうな薬がまだある.この抗がん剤は欧米では承認されていて標準療法となっているが,日本には薬そのものがない.当該の抗がん剤を使用した」.
読者にもこのような状況を見聞きされた方が多いと思う.ドラッグラグ問題である.実は抗がん剤については薬事法上の承認申請や補償のあり方など,他の医薬品とは違った特殊なところがあるために,また筆者自身ががん専門医ではないために,本稿ではがん治療についてではなく,小児領域の薬物療法を中心とした話をしたい.小児領域でも成人と同様,あるいはそれ以上に,ドラッグラグ,ワクチンラグ(海外で承認され,使用されているワクチンが日本では承認されていない)や,デバイスラグ(海外で承認され,使用されている医療機器が日本では承認されていない)などが存在する.
硬い文章ではあるが,喫緊の課題でもあり,ぜひ読者の皆さんにも一緒に考えていただきたい.なお,個人の見解が含まれていることを予めお断りしておく.
まず,ことばや事項について,正しい理解をいただきたいものを抜粋する.その後,小児領域で未承認薬や適応外薬が使用される現状(相変わらず多い)とその裏返しとなる医薬品開発のしにくさ,そしてこれらの状況を欧米ではどのように克服しようとしているか,について触れる.
次いで,未承認薬等が使用される場合の具体的問題点として,副作用評価が不十分になることを挙げる.有効性・安全性がきちんと評価された医薬品が臨床現場で使用されることが最重要である.ただし,未承認薬・適応外薬の使用については,保険適用の話などに絡み,医療費の分配のあり方など,より大きな枠組みでの議論も必要であろう.
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