特集 越境!公衆衛生
公共政策学としての公衆衛生学―専門職大学院における教育の試み
坪野 吉孝
1
1東北大学公共政策大学院
pp.424-427
発行日 2006年6月1日
Published Date 2006/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100575
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公衆衛生学には,科学としての側面と,政策学としての側面がある.保健医療を専攻する学生を対象に公衆衛生学の教育を行う際には,筆者も科学としての疫学の教育には力を入れてきたつもりだし,保健福祉分野の行政制度の解説もしてきた.
けれども振り返ってみると,今日の日本社会が直面している実際の政策課題を取り上げ,学生に現状と課題を理解させながら,問題解決のため具体的な政策提言を行わせるような教育は行ってこなかった.つまり,公衆衛生学のもっぱら科学としての側面を教えることに留まり,政策学としての側面を重視して実際的な訓練を行うことは不十分だったように思う.より良い教育のためには,個別の手法や事実の解説に留まらず,具体的な問題解決のプロセスを(擬似的に)当事者として経験してみることが必要だろう.そうした教育はまた,保健医療を専攻する学生に留まらず,広く政策や行政の専門家を志す学生にとっても,貴重な経験となるはずだ.
平成17年度に筆者は,東北大学公共政策大学院の教育プログラムである「公共政策ワークショップ」の一環として,法学部など社会科学系の学部出身者を中心とする修士課程1年の学生を対象に,保健福祉分野の具体的な問題を取り上げ,政策提言を行わせる教育を試みた.以下,その概略を紹介する.
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