特集 これってホント? 母乳のウワサとエビデンス
【これってホント? 母乳のウワサ】
—「母乳は栄養が足りない」ってホント?—新生児にとっての母乳の意義を再確認
甘利 昭一郎
1
1国立成育医療研究センター新生児科
pp.156-161
発行日 2026年4月25日
Published Date 2026/4/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.134781680800020156
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「母乳は栄養が足りない」という主張を耳にすることがあるかもしれません。たしかに,母乳に栄養素の不足が全くないわけではないのです。たとえば乳児期早期にはビタミンK欠乏症を予防する目的でビタミンK製剤の定期的に投与することが推奨されています1)。ほかにも,母乳で育つ児には,不足しないよう注意すべき栄養素がいくつか存在します(後述)。しかしこれらを理由に「母乳は栄養が足りない」と表現するのは適切ではありません。むしろ母乳は,ほんの数種類の栄養素に留意することで,健常な正期産児の生後6カ月までの成長・発達を支えるうえで栄養学的に十分であると考えられています2)。さらに母乳には免疫学的成分や,腸内細菌叢の形成に役立つ成分など,栄養素以外の成分も豊富です。これらも「摂取により児の健全な成長・発達に寄与する成分」であり,広い意味で「栄養」と言えます。母乳は豊富で多様な「栄養」を含んでいるのです。
こうしたことは日頃から母乳育児支援に携わる皆さんにとっては当たり前のことかもしれませんが,本稿では改めて,母乳の特徴,長所,そして限界について科学的知見に基づいて解説していきます。

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