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バルーン内視鏡やカプセル内視鏡といった小腸内視鏡検査の開発から実に四半世紀が経過しようとしている.これらの内視鏡検査の普及とともに,以前は消化管の暗黒大陸と呼ばれていた小腸においても,さまざまな疾患の臨床病理学的特徴の解明が確実に進んできた.このような背景から,消化管診療を専門とする者にとっては小腸疾患についての知識を深めることは不可欠となってきており,2005年以降は本誌においても毎年のように小腸疾患を主題に据えた特集号が組まれてきた.ただし,ここ数年は小腸腫瘍性疾患に関する特集号が多かったことから,今回は非腫瘍性疾患に焦点を当てた特集号とした.
小腸非腫瘍性疾患を系統的に理解するには,大腸の非腫瘍性疾患と同様に病因ごとに大別して疾患の特徴や鑑別点をまとめたほうがよい.序説では,小腸非腫瘍性疾患を系統的に理解する際の考え方について豊富な経験をもとにまとめられている.主題では,小腸炎症性疾患における病理組織学的特徴について概説(近藤論文)が加えられた後に,病因別に各疾患の特徴や鑑別点をまとめた臨床サイドの論文が続く.感染性疾患の鑑別は治療方針を決定するうえでも最初に実施すべきであるが,小腸の感染症は大腸のそれと比較して経験値が低い点から難しい.金城論文では,日和見感染症あるいは亜熱帯地域を浸淫地とする感染症である非結核性抗酸菌感染,Whipple病,糞線虫症,クリプトスポリジウム症といった日頃遭遇する機会がほとんどない感染症についても内視鏡画像とともにまとめられており,知識の整理に極めて有用である.感染症が除外された場合,小腸炎症性疾患の鑑別においては潰瘍の分布,形態のみならず,腸間膜付着側あるいは対側優位といった偏在性の有無も重要な情報となる.そのような観点からは,内視鏡所見のみならずX線造影所見も有用な情報を与えてくれる(梅野論文).Crohn病との鑑別が問題となる非特異性多発性小腸潰瘍症に加えて,MEFV遺伝子関連疾患のような新たな疾患概念も確立されつつある.種々の画像モダリティによる評価も含めて腸管病変の形態的特徴が検討される必要があろう.一方,全身疾患に伴う小腸病変,医原性小腸炎は病歴聴取,身体的徴候,検査所見などに基づいた総合的判断が極めて重要となる.ただし,超高齢化社会となった現在,ポリファーマシーや認知機能の問題から,重要な病歴が聴取できない場合も十分想定される.したがって,全身疾患に伴う小腸病変(松岡論文)や医原性小腸炎(北村論文)の診断においても,画像所見から診断を想起する必要性も十分想定される.本邦の年齢分布の推移からもこれらの疾患群に遭遇する機会は増加する可能性が高い.主題症例では遭遇する機会の少ない小腸非腫瘍性疾患の臨床経過が美麗な画像とともに示されている(福居・平田・邉見・佐野村論文).実臨床で自らが遭遇した場合を想定しつつ学んでいただきたい.その他,トピックスでは,Heyde症候群における小腸血管異形成の実態(井上論文),非腫瘍性疾患ではないが小腸悪性腫瘍プロジェクト研究結果(壷井論文)についても紹介されており,多岐にわたる小腸非腫瘍性疾患をカバーした特集号になったと考えている.

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