書評
感染症薬学のひきだし—疾患・治療・制御の基本から応用まで
池末 裕明
1
1名大病院薬剤部
pp.1095
発行日 2025年10月1日
Published Date 2025/10/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.030126110530101095
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感染症治療と感染制御学を実践的・体系的に学べる教科書
近年,薬剤耐性の問題を考慮した適切な薬物療法や感染制御における薬剤師の役割はますます重要になっており,一層積極的な関与が求められています.本書はそうした時代の要請に応える形で編集され,感染症分野で必要とされる理論と実践を体系的に学ぶことができます.ぜひ多くの薬剤師の方や,感染症治療や感染制御学を学ぶ薬学生に本書を手に取っていただきたく,ご紹介します.
本書は「総論」「感染臓器・原因微生物からみた感染症」「感染症の治療薬」「感染制御学」と大きく4つのまとまり(「ひきだし」のタイトルになぞらえて「段目」)から成り立っています.
・1段目「総論」では,感染症の基本や抗菌薬の選択と適正使用,PK/PDなどの基礎的な内容が網羅されています.
・2段目「感染臓器・原因微生物からみた感染症」では各臓器や原因微生物に焦点を当てた感染症の解説が続き,実際の臨床現場で遭遇する症例に即した知識が盛り込まれています.
・3段目「感染症の治療薬」では,各薬剤の特徴を理解し,代謝や病態による薬の使い分けなどの実践的な知識が満載です.各項目の解説が相互につながっているため,薬剤師としての実践力を重層的に養うことができます.
・感染制御活動を担当する場合は,AST(抗菌薬適正使用支援チーム),ICT(感染制御チーム)の一員として,感染症を専門としていない医療従事者に適切な助言をしたり院内の運用を定めて説明したりするなど,指導的役割が求められます.4段目「感染制御学」の段では,これらの理論的背景もまとめられており,業務を進めていく支えになってくれるでしょう.

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