臨床検査のピットフォール
ルーチン外の特殊検査—糸状菌との対峙
名取 達矢
1
,
鉢呂 彩花
1
1信州大学医学部附属病院臨床検査部
pp.748-752
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.030126110530070748
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はじめに
自動分析装置や質量分析器が普及してきた今日においても,糸状菌の菌種同定は形態学的同定が主である.培地や顕微鏡の所見に基づく同定は,臨床検査技師の熟練度に左右される.しかしながら糸状菌感染症の症例自体も遭遇頻度は高くないため個々の経験は浅く,菌種同定に至らない事例が多い.菌種同定が必要な場合には外部の専門機関などに同定を依頼するケースが多いと推察される.
信州大学医学部附属病院臨床検査部(以下,当施設)には微生物検査室とは別に遺伝子・染色体検査室が存在し,PCR関連装置や,DNAシークエンサーといった遺伝子解析設備を有しているため,微生物の遺伝子同定程度であれば自施設内で完結できる体制となっている.
本稿では当施設での糸状菌同定における検査体制とともに,筆者らがこれまでに経験した症例の一部を紹介する.

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