連載 こころのフューチャー・デザイン―「未来人」からみた現代の精神医学
ロボットによる未来のこころの医療現場―ドラえもんが精神科医になったら?
加藤 隆弘
1
1北海道大学大学院医学研究院神経病態学分野精神医学教室
pp.534-539
発行日 2025年10月5日
Published Date 2025/10/5
DOI https://doi.org/10.69291/pt51050669
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はじめに
「フューチャー・デザイン(Future Design)」は,持続可能な社会を創出するために,存在しない将来世代に代わって「仮想将来世代」の未来人を現世代(いま・ここ)に導入し,新たな社会を創造する枠組みのことです。連載では,フューチャー・デザインを精神医学に導入し,現代の精神医学・精神医療における諸問題・課題について読者の皆さんと考える場を提供しています。前回は「社会的ひきこもり(以下ひきこもり)」にスポットライトを当てて,フューチャー・デザインの誌面体験会を開催しました。読者の皆さんとともにタイムマシーンに乗って,50年後の日本の精神医療現場にワープしましたが,いかがでしたか。2075年の日本は,温暖化・大気汚染・新たな感染症などにより外出困難な事態に陥っており,新たに「外出病」という精神疾患が生まれていたのです。体験会では,総「ひきこもり」時代の仮想未来人になって,2025年現在ひきこもり状態にあり苦悩している方々にエールを送りました。
さて,連載もあと2回となりました。今回は,精神分析概念の肝となる転移・逆転移の日常臨床における課題の一例を提示して,こうした課題を解消してくれるかもしれないと私が密かに考えているコミュニケーションロボットを用いた臨床研究(精神科医/心理師による対人面接とロボット面接の比較)の成果を紹介し,転移・逆転移から開放されるロボット精神医療の未来について考えてみます。

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