世界レベルの心臓外科医を育てる

「がんのない心臓」高校卒業後は岡山大学医学部に進学し，岡山大学第二外科学講座に入局しました。当時の第二外科学講座は，主に消化器外科，心臓外科，呼吸器外科を担当していました。私は叔父と同じ消化器外科医の道を選ぶことも視野にいれ，外科医としての研修を受けていた頃で，まだ心臓外科にはあまり魅力を感じていませんでした。外科医として一本立ちし始めた頃，ある患者さんと出会いました。多発性悪性骨髄腫が中学生のときに発病し，肺に転移が見つかると病巣を切除し，化学療法を繰り返す治療を続けていた女子高校生でした。私が主治医になってから約3年経ったある日，病室に行くと彼女はウエディングドレスを着ていました。私と一緒にウエディングドレスを着た写真を撮るのが彼女の夢だったと御両親からお聞きし，記念写真を撮った直後，彼女の容態が悪化して亡くなりました。