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ARVO 2019は4月28日から5月2日まで,カナダのバンクーバーにあるVancouver Convention Centreにて行われた。昨年のホノルルも印象深かったが,今年はアメリカを離れた都市での開催であった。いま一度日本とアメリカでのドライアイに関する定義を確認する。DEWS(dry eye workshop)によると,ドライアイは「涙液および眼表面の多因子疾患であり,眼不快感,視機能異常および眼表面に障害を与え得る涙液層の不安定性を引き起こす。それは,涙液層の浸透圧上昇と眼表面の炎症を伴う」と定義されていたが,2017年に「ドライアイは涙液の恒常性破綻によって特徴付けられる眼表面の多因子疾患であり,眼症状を伴い,その涙液層の不安定性と浸透圧上昇において眼表面の炎症と傷害,感覚神経の異常が病因となる」と改定された。日本のドライアイ研究会では,ドライアイは「様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり,眼不快感や視機能異常を伴う」とされていた。しかし2016年に,過去のドライアイ研究により角結膜上皮障害がなくとも涙液層の安定性低下をもつだけで,重症の涙液減少型ドライアイと同様の症状をもつドライアイ患者群がいることがわかってきた。そこで新定義では「ドライアイは様々な要因により涙液層の安定性が低下する疾患であり,眼不快感や視機能異常を生じ,眼表面の障害を伴うことがある」となった。両者ともに自覚症状を有することが定義に含まれており,日本では主要な因子として涙液層の不安定性を重視し眼表面の層別治療(tear film oriented therapy:TFOT)として薬剤によるドライアイ治療が行われている。今回,筆者が研究している脂質代謝という観点から新しいドライアイ治療薬につながることを示唆する研究を紹介する。
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