特集 ちょっと気になる妊婦・胎児
母体編:妊娠中
貧血に対する内服薬の治療効果が少ない/血小板数10万以下が続く
板倉 敦夫
1
ITAKURA Atsuo
1
1順天堂大学産婦人科
pp.513-517
発行日 2025年5月10日
Published Date 2025/5/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002136
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貧血に対する内服薬の治療効果が少ない
近年の産科診療で,認識が大きく変わった一つが妊娠性貧血であろう。妊娠中の貧血は血球成分より血漿成分の増加が多い水血症とよばれる生理的現象で,血栓症を予防する効果もあるなど,むしろ有益な現象であるとも考えられてきた。さらに不用意な鉄剤投与は鉄過剰を起こすリスクがあると教えられてきた。しかし,①妊娠性貧血は分娩後の輸血だけでなく,分娩後異常出血とも関連がある,②消化管からの鉄の吸収は自己調節機能があるため,内服薬による鉄過剰は起こりにくい,③鉄欠乏性貧血では平均赤血球容積(mean corpuscular volume:MCV),平均赤血球血色素濃度(mean corpuscular hemoglobin concentration:MCHC)いずれも低下しにくい。以上の3点が明らかとなり,貧血への対応が変わりつつある。

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