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目的:非弁膜症性心房細動(non-valvular atrial fibrillation:NVAF)患者に対するアピキサバン治療は,アリストテレス試験によりワルファリン治療に比し,脳卒中などの心血管イベントを減少させることが示されたが,それに伴いイベントに関わる医療費削減効果も期待される。本研究の目的は,NVAF患者におけるアピキサバンのワルファリン治療に対するイベント減少効果による費用削減額を推計することである。
方法:海外で開発された医療経済分析のためのシミュレーションモデルを利用し,わが国におけるアピキサバン治療によるイベント関連の費用削減額を推計した。モデルでは,NVAFに関連するイベントとして,虚血性脳卒中,出血性脳卒中,出血性脳卒中以外の頭蓋内出血,消化管出血,その他の出血,心筋梗塞,全身性塞栓症,その他の心血管性疾患による入院を設定し,脳卒中では発生後の障害度を考慮した。アピキサバン,ワルファリン治療による各イベントの発生予測は海外モデルに準じ,各イベントの急性期費用はわが国のDPC(Diagnosis Procedure Combination)データにより設定した。
結果:NVAF患者の生涯にわたる脳卒中発生回数は,1,000人当たり17回(虚血性脳卒中で3回,出血性脳卒中で14回減少),出血性脳卒中以外の出血は72回減少した。これらのイベントの減少により,虚血性脳卒中で100,716円,出血性脳卒中で45,336円,出血性脳卒中以外の出血で47,110円の費用が減少し,NVAF患者1人当たりの全イベントに対する総削減額は195,188円と推計された。わが国のNVAF患者数を約100万人とすると,脳卒中および出血性脳卒中以外の出血の発生回数はそれぞれ17,000回,45,000回減少することとなり,全国的な医療費の削減額は約2,000億円になると推定された。
結論:NVAF患者に対するアピキサバンの投与により,主に脳卒中および出血の治療に伴う費用が減少することが期待された。アピキサバンは,虚血性脳卒中や出血性脳卒中の発生率を低下させるだけでなく,起こり得るイベントに関わる費用をも減少させる可能性がある。