整形外科領域で問題となる循環器疾患 -――薬物療法を中心に

は じ め に

　わが国は超高齢社会を迎え，運動器疾患は増加の一途をたどっている．身体的フレイルともいうべき「ロコモティブシンドローム」患者の増加に伴い，整形外科医のはたすべき役割は今後ますます増えると想定される．この流れは循環器領域においても同様であり，高血圧，糖尿病や脂質異常症といった生活習慣病はもちろん，これらの基礎疾患をベースに心不全，虚血性心疾患，不整脈，弁膜症といった心臓の構造的・機能的な変化に伴う心疾患も急増しており深刻な問題となっている．ゆえに，これから整形外科を受診する患者は循環器疾患を併存しているケースが増加すると見込まれる．われわれ循環器専門医が整形外科の先生方からコンサルトを受ける内容は多岐にわたるが，そのなかでもとりわけ多いのが「虚血性心疾患と抗血小板療法」，「静脈血栓塞栓症と抗凝固療法」，「心不全の薬物療法」に関する相談である．本稿では，これらのテーマについて最近の話題を取り上げ，対応方法や，われわれが日ごろ行っている診療に関して概説させていただく．また最近，われわれ循環器領域で「整形外科疾患に潜む心アミロイドーシス」が大きな注目を集めており，特に整形外科の先生方にもご存じいただきたい内容として取り上げる．