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本誌において,『根拠がわかるがん看護ベストプラクティス(第17巻2号)』(2012年)を発刊して7年あまりが経過した.この間に,がん医療の発展,医療政策の変化,地域包括ケアへの取組みなど社会情勢は大きく変化し,病院完結型医療から患者を生活者としてとらえる生活者中心の地域完結型医療へ,医療提供の場の移行が進んたことと並行して,チーム活動のさらなる推進,多職種の連携・協働のさらなる強化の重要性が浮彫りになってきた.
がん患者とその家族にとっては,「がんの診断・治療や進行に伴う症状の苦痛をいかに緩和し,就労・就学などいかに自分らしく生き抜くことができるか」が大きな課題である.
看護師はじめチームメンバーにとっては,がんサバイバーシップ支援をいかに提供するかが大きな課題である.これらの課題に対して,エビデンスとなる研究結果やガイドラインなど臨床実践に活用できる資源も増えている.このことは,看護師が患者の個別ケアを創造し実践するのに非常に役立つ.
本書は,変動する時代に即した内容を加え,がん治療とケアに関する普遍的な内容も重視し新たに編集した.臨床における根拠ある実践の本質,質の高いケアを提供する考え方や方法,研究と実践のつながりを確かなものとするとともに,専門的視点に立った高度な看護実践を提供できるように,がん医療・看護の第一人者が最新の研究成果や実践例を活用し,解説するものである.
「第Ⅰ章 序論:EBPとがん看護」では,EBP (evidence based practice)の理解と援助について解説した.
「第Ⅱ章 総論:がんとエビデンス」では,がん看護の基盤となる主な学問領域から最新の考え方について解説した.とくに「がんと遺伝」の項目に遺伝子検査の内容を追加した.
「第Ⅲ章 各論:がん治療とエビデンス」では,疾病を修復する治療と苦痛を緩和する治療に関する最新のエビデンスやトピックを示して解説した.
「第Ⅳ章 各論:がん患者へのケアとエビデンス」では,新たに「免疫チェックポイント阻害薬治療を受ける患者のアセスメント」,「世代によるかかわりの違いとエビデンス」,「地域で暮らすがん療養者の支援とエビデンス」,「活用できる社会資源とエビデンス」,「患者・家族への教育とエビデンス」を追加した.療養の場や世代にかかわらずケアが提供できるように,実践に役立つエビデンスやトピックを抽出して看護の要点を示した.また,経験事例なども交えながら,多忙な臨床現場でも理解できるように実践に役立つ内容となるよう工夫した.
本書が,がん看護のスペシャリストを目指す看護師,がん看護の領域に携わる看護師および看護学生にとって,看護実践の一助となれば幸いである.
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