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【研究目的】口腔がん手術を受ける患者に積極的な口腔ケアを行うことにより術後合併症予防の有用性を明らかにする。【研究方法】対象者はA大学医学部附属病院にて口腔がんで手術を受けた患者とした。非介入群は2002年1月~2007年3月に口腔がんで手術を受けた患者30名。介入群は2007年4月~2008年10月に口腔がんで手術を受けた患者24名であった。調査項目は術後発熱期間、最高発熱、鎮痛薬使用期間、安静期間、気管孔閉鎖までの期間、在院日数、経鼻チューブ抜去までの期間、経口摂取開始までの期間、合併症(創部感染、皮膚瘻孔、肺炎など)。介入方法:手術前には歯科口腔外科を受診し、(1)口腔内の診察、(2)プラーク除去、う歯の治療、(3)歯科衛生士による口腔衛生指導、手術直後から口腔ケアを1日3回(最低)施行した、(4)口腔清拭:アズノール含嗽液に浸したスポンジブラシを使い、血餅や痂皮を除去、(5)吸引:吸引カテーテルで咽頭部に貯留した唾液や粘稠痰を除去する、(6)舌苔の付着を認めた場合は10%ピロゾン水(過酸化水素水)で舌を拭く、(7)アズノールによる含嗽、(8)セルフケアの介助、を行った。経口摂取開始からは看護師による口腔ケアを終了し、アズノール含嗽液での含嗽をセルフケアにて継続する。データ収集:非介入群においては診療録より、介入群は積極的な口腔ケアを実施しながら同様の調査項目にてデータ収集した。分析方法:各項目について統計ソフトにて解析し有意差(0.05)とした。倫理的配慮としては、研究実施病院における倫理審査を受けて行っている。非介入群においては包括同意に基づいて研究を実施している。【研究結果】口腔ケアを術直後から実施することによる、創部離開や疼痛の増強などの有害事象は起こらなかった。合併症における創部感染、皮膚瘻孔、肺炎については有意に頻度が低下していた。ほかの項目において減少はみられたが有意差は認められなかった。【考察】口腔がんにおける積極的な口腔ケアは安全かつ簡単にできる手技であり、その効果として術後合併症の予防につながるケアである。積極的に口腔ケアを進めていくことの有用性が示唆された。
©Nankodo Co., Ltd., 2011