心臓の虚血?-病態生理と臨床のはざまを埋める 症状と虚血性心疾患
虚血性心疾患の病態生理"キホンのキ" 虚血ってなんだ? 急性冠症候群と安定した狭心症の違い
大塚 文之
1
1国立循環器病研究センター 心臓血管内科冠疾患科
キーワード:
冠状動脈血栓症
,
冠状動脈硬化症
,
狭心症-不安定
,
心筋梗塞
,
急性冠動脈症候群
,
狭心症-安定
,
動脈硬化プラーク
,
狭心症-労作性
,
病態生理
Keyword:
Angina, Unstable
,
Coronary Artery Disease
,
Coronary Thrombosis
,
Myocardial Infarction
,
Acute Coronary Syndrome
,
Plaque, Atherosclerotic
,
Angina, Stable
pp.363-369
発行日 2017年3月1日
Published Date 2017/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00974.2017135848
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虚血性心疾患の大部分は動脈硬化を基盤とした冠動脈疾患である.冠動脈硬化性プラークは,内膜内の脂質沈着と泡沫化マクロファージの浸潤,そして壊死性コアの形成という過程を経て形成されていく.線維性被膜の破綻によって生じるプラーク破裂は,冠動脈血栓症の最も頻度の高い成因である.血栓症は無症候性に生じる場合もあり,器質化過程を経て狭窄度の進行したプラークが形成される.冠動脈疾患は,狭心症,心筋梗塞,無症候性心筋虚血,冠動脈突然死に分類される.狭心症の分類としての安定・不安定狭心症という表現は,それぞれが狭心症の経過の一時期を表す病型と捉えることもでき,病態のオーバーラップが存在しうることに留意する必要がある.不安定狭心症と心筋梗塞,冠動脈突然死は,急性冠症候群として一つの疾患概念と捉えられるようになってきた.急性冠症候群は,「冠動脈プラークの破綻とそれに引き続く血栓形成」を共通の病因とし,ST上昇型心筋梗塞,非ST上昇型心筋梗塞および不安定狭心症に細分される.心筋梗塞の定義は変遷しており,急性の心筋虚血による心筋壊死の証拠として心筋トロポニンの上昇を用いる定義が提唱されてきているが,これは従来不安定狭心症とされてきたものも含んでおり,適用する定義によって診断名が異なることに注意が必要である.
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