巻頭言
高次脳機能障害と第7次医療計画
生駒 一憲
1
1北海道大学病院リハビリテーション科
pp.178
発行日 2018年3月16日
Published Date 2018/3/16
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- 文献概要
高次脳機能障害とは,脳の器質的病変により生じた記憶障害,注意障害,遂行機能障害,社会的行動障害などの認知障害を指す.学術的にはいわゆる巣症状としての失語,失行,失認なども含まれるが,臨床上はこれらの症状は区別して扱われることが多い.上述の診断基準は2001年度から行われた高次脳機能障害支援モデル事業で策定された診断基準で,注釈をつけると行政的な診断基準である.つまり,高次脳機能障害者に行政サービスなどを行ううえでその範囲を規定するための基準である.このため,学術的な定義とは完全に一致はしないが,この診断基準に則って診断することで高次脳機能障害者が支援を受けるうえでのメリットがあるため軽視はできない.すなわち,それまでは高次脳機能障害があっても十分な支援を受けることができず,社会復帰の道が閉ざされていた人々に,的確に診断しリハビリテーション医療と福祉的支援を施すことで社会復帰への道が開かれる.もちろん,ここで中心的役割を担うのはリハビリテーション科医である.
2001年当時,高次脳機能障害者の社会的支援は,モデル事業を立ち上げて検討し,診断基準までつくらなければいけないほど遅れていたといえるが,患者とその家族や家族会,関係する医療・福祉関係者などの尽力で徐々に認知されるようになってきた.都道府県で行われている高次脳機能障害支援普及事業(都道府県により事業名は異なる)も普及啓発に果たした役割は大きい.しかし,今までは,特殊な疾病に特殊な事業が独立して行われているという印象は免れなかった.
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