- フリーアクセス
- 文献概要
- 1ページ目
今回の編集後記は編集主幹を仰せつかっている佐賀大学一般・消化器外科の能城です.編集委員会では大きく臓器別領域別で各グループに1〜2名の合計13名の編集委員が詳細に査読していますが,投稿の偏りでご負担をおかけしている委員の方もおられることをこの誌面を借りてお詫び申し上げます.さて,2023年4月から本会誌の原著・手術手技・私の工夫・症例報告などの掲載覧にvideo articlesが加わりました.映像の持つ情報が外科教育に与える影響は言うまでもなく直感的でわかりやすく手術を理解することに大きく貢献します.これを期待して前日本内視鏡外科学会理事長の坂井義治先生が導入した枠組みですが,video articlesの投稿数も順調に進み,毎回2〜3本のvideo articlesを審査するようになりました.これも会員の皆様の努力の賜物と思い,真摯に拝見させていただいています.ビデオは新規性に富むpriorityの高いものに限定せず,基本的でも繰り返し警鐘を鳴らすものは採用する方針としております.内視鏡外科手術では常に手術を術者の目で捉えてきたものがそのまま映像として残るので,これまでの開胸開腹の手術ではない利点があります.この場面はぜひ共有したいなというone sceneでさえ学術的な背景をもって説明を付加していただいたものには掲載価値がありと判断しています.今後とも奮って応募をよろしくお願いします.
さて本学会誌は毎年100篇ほどの投稿を頂戴して採択率65%ほどで推移しています.今回の29巻4号掲載予定の論文は9本です(原著が1本,手術手技が1本,残り7本が症例報告です).原著論文は日頃よく施行されている右側結腸癌手術の腹腔鏡手術手技の安全性と根治性を向上するための工夫が考察されています.手術手技の論文では胃切除術時の腫瘍同定に関して術中超音波を使って術前につけたマーキングのクリップを同定するといった手技を紹介しています.症例報告では希少例報告以外では膵頭十二指腸切除後の反復性胆管炎に対して腹腔鏡下の消化管経路変更術の紹介や,肝外門脈閉塞症患者での胆囊摘出術において3DシミュレーションとICG蛍光胆道造影併用の工夫などの報告もあり,日常診療の知識として覚えておきたいものがあります.それ以外でも腹壁瘢痕ヘルニア手術で行われているeTEPに対して手術時間の短縮や手技の簡便化を目指してeMILOSと呼ばれる手技が紹介されています.煩雑で時間がかかりいまだ標準化が難しいこの手術に議論を投げかけるような手技であり,今後の手術方針に対する検討に有用な報告です.このように掲載された論文はいずれも一読の価値があり,本会誌が内視鏡外科発展の一助となることを願って編集後記とさせていただきます.
Copyright © 2024, JAPAN SOCIETY FOR ENDOSCOPIC SURGERY All rights reserved.