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編集後記
大塚 隆生
pp.244
発行日 2020年5月15日
Published Date 2020/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.4426200809
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「“〜にて”は江戸時代の言葉でござる.」若い頃に指導医から原稿に赤ペンでこのように注意書きをされて以降,「〜にて」を使うことを止めました.「〜にて」は本来古語ですが,現在使用して悪いわけではありません.しかし,「主訴・黄疸にて受診し,当院にて,CTにて膵腫瘤を指摘され,生検にて腺癌が検出されたため,膵癌の診断にて手術を行った.」と「〜にて」のオン・パレードではさすがに注意したくなります.「〜で」で意味は伝わりますし,「黄疸を主訴に受診し,当院でCTを撮影したところ膵腫瘤を指摘され,生検で腺癌が検出されたため,膵癌の診断で手術を行った.」と,もっと丁寧に表現することもできます.
医師が最も「〜にて」を用いる職種であろうと思いますが,その中でも高名な先生方の文章には「〜にて」という表現が少ないように感じます.次はそういった視点でも読んでみてください.「〜にて」は遠山の金さんの「これにて一件落着」など,時代劇の中で使われてこそ生きてくると個人的には思っています.また「〜にて」を多用している投稿論文には,他にも誤字,言葉の誤用などが目立つ傾向があります.「CT撮影したところ」などの助詞が抜けた表現(「CTを撮影したところ」とすべき),血管の走行(「走行」は車などの自力で動けるものが走っていく様子を示す表現であるため,「地層の走向」と同様の扱いで「血管の走向」とすべき),改行後に一マスあけない,句読点がない,等々です.
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