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編集後記
中村 雅史
pp.284
発行日 2019年5月15日
Published Date 2019/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.4426200709
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冬の終わりを告げる春一番の嵐が続く中でこの編集後記を書いています.冬の終わりと共に30年と数か月続いた平成も終わりを告げることとなりますが,本号は新元号下での第一号となります.日本内視鏡外科学会雑誌は1996年(平成8年)2月に創刊されました.フランスの産婦人科医Mouretが最初のビデオスコープ下による胆囊摘出術を成功させた9年後であり腹腔鏡手術があらゆる分野で挑戦的な医療であった時代でした.その後,ビデオや鉗子,エネルギーデバイス等の目覚ましい進歩に支えられて,今日では私が専門としている肝胆膵領域も含めたほぼ全ての領域で腹腔鏡・胸腔鏡を用いた手術が日常的に行われるようになりました.
しかしながら,その間に起きた腹腔鏡関連の医療事故が社会問題になったことを忘れてはなりません.この反省から若林剛先生,金子弘真先生らが中心となり肝臓内視鏡外科研究会で消化器外科領域では最初の前向きレジストリーが開始され,これに倣って腹腔鏡下の膵切除術に関しても同様のレジストリーが整備されました.結果的にこのようなシステムが評価されて,肝・膵の高難度手術に関しても腹腔鏡手術が保険収載されることとなったのは周知のことと思います.このような歴史的背景を思いながら本号を見直してみますと,単純に新たな術式の発表等でなく,複雑な病態や稀な状況への腹腔鏡手技の応用法といった論文が主であり,この分野が既に成熟していることを改めて感じさせる内容になっています.
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