特集 急性冠症候群
9.ACSという概念がもたらしたもの
安斉 俊久
1
Toshihisa ANZAI
1
1国立循環器病研究センター 心臓血管内科
pp.167-172
発行日 2013年1月1日
Published Date 2013/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3102100512
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1992年に,Fusterらによって急性冠症候群acute coronary syndrome(ACS)という概念が提唱され,急性心筋梗塞,不安定狭心症,心臓突然死は,いずれも冠動脈硬化粥腫の不安定化に伴う急激な冠動脈内腔の閉塞または狭窄により生じる,1つの症候群として考えられるようになった1,2)。また,病理学的な検討によって,急性心筋梗塞の多くは,軽度の冠動脈狭窄から発症することも明らかとなった。病態が明らかになるにつれ,予防または治療の戦略も確立され,現代では抗血小板薬,スタチンをはじめとした薬物療法,急性期冠動脈血行再建術に加え,二次予防のための薬物療法が確立されるに至った。そうした意味では,ACSという概念が,日常の循環器臨床にもたらしたものは多大である。
本稿では,冠動脈疾患が狭心症と心筋梗塞のみに分類されていた時代まで遡って,ACSという概念が生まれた背景と治療戦略の変化まで含めて述べることとする。
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