研究室から
東大理学部植物生理学研究室
高松
pp.264-265
発行日 1956年4月15日
Published Date 1956/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905887
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他所から私達の研究室に始めて足を踏み入れる人は部屋に雑然と並ぶ一見ガラクタの様に思える道具類に辟易するかも知れない。その上,藥品棚は勿論冷臓庫,実験材料を培養する孵卵器等も廊下にまではみ出し,一体どこで実験しているかと思われる。わずかに残つた室内で又,ガラクタに類した器具を並べて実験している。先輩に言わせると,これ等のガラクタ即ち実験装置は細心に又最も合理的に配置してあるのだそうだ。そして,その時々に応じて使いよい様に配置換えが度々行われるとのことである。
何処の研究室も同じであろうと思うが,私達の処も消粍品は出来る限り買わぬ健前であるので往々一本のメスシリンダーを探す為に部屋中を血眼になつて駈ずり廻ると云つた風景が展開される。それも,100mlとか50mlとかいつた完全なものではなく,上の方がかけて修理した75mlと34mlとかのメスシリンダである。だから罐詰の空罐や焼酎の空瓶も貴重な道具の一つである。空罐がwater-bathとして狩出され湯呑茶椀に氷を入れて冷すこともある。之は必ずしも日本丈の実験室風景でない様で,1月に帰朝された小倉先生の話しではChanceの処でも,メスシリンダーなどは買うべきものでは無いものとして通用しているそうだから私達も現状に大いに満足の意を現す次第だ。
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