巻頭
助教授採用試驗
江上 不二夫
1
1名古屋大学理学部生化学
pp.147
発行日 1954年2月15日
Published Date 1954/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905755
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これは昨年(1952年)のフランスの話である。私が親しく交わつた2人の生化学者が同時に助教授採用試験を受けた。P.MandelとR.Michelである。前者は核酸生化学で,後者は甲状腺ホルモンの生化学で,その業績は世界的に高く評価されている。
2,3の大学医学部で生化学助教授の籍があいた。それを補充する。希望者を公募する。応募者は試験を受ける。A, B二つの箱がある。NHKの"私は誰でしよう"のようだ。各々の箱には沢山の問題が入つている。二つの箱から一つづつ問題をひきだす。受驗者は直ちに図書室に入れられる。Aの箱からとりだした問題を4時間で調べるのである。これは人に相談してはいけない。4時間後に講義室に導かれる。そこには審査員一同の他に,研究室の同僚,友人,学生,一般の生化学者,それから家族等が待つている。そこで順次に与えられた問題につき約30分の講演をするのである。審査員は盛に質問をする。一般聽講者の質問も許される。それから2日後にBの問題についての同樣な発表会がある。この方は講演時間は長い。1時間か1時間半であつたと思う。この間の2日間の勉強については全く自由である。
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