Japanese
English
連載講座 哺乳類の初期発生
初期発生と糖転移酵素
Glycosyltransferases in early development
古川 清
1
Kiyoshi Furukawa
1
1東京大学医科学研究所生物有機化学研究部
pp.518-525
発行日 1986年10月15日
Published Date 1986/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425905429
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卵黄の中で形のない状態から,鶏胚が徐々に出現してくるのを最初に観察したのは,おそらくAristotleであろう。それから2000年余り経た今日では,この一連の形態形成は細胞の移動と接着によることが明らかになっている。したがって,細胞が細胞と,または細胞間質と特異的に接着する分子機構を解明することは,形態形成の中心的課題である。
一方動物細胞では,発生に伴い胚細胞表面複合糖質の糖鎖構造が著しく変化することは,微細な構造変化をとらえる種々のレクチンやモノクローナル抗体を用いた研究で,明らかにされている1,2)。同時に,これらのレクチンや抗体で細胞表面を処理すると,胚発生が阻害されたり逆に胚の分化が誘導されたりするので3-5),初期発生において胚細胞表面に発現される複合糖質糖鎖が重要であることは明白である。これらの現象が,各発生段階で特異的に発現される遺伝子とその産物により調節されていると考えられるが,その遺伝子産物の実体については,ほとんどわかっていない。本稿では,これらの分子の一つが糖転移酵素である可能性を探りつつ,初期発生における転移酵素の意義について考察してみたい。
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