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特集 医学におけるブレイクスルー/基礎研究からの挑戦
免疫疾患:自己免疫疾患とアレルギーの分子免疫生物学
Molecular immunobiology of autoimmune disease and allergy
平野 俊夫
1
,
末村 正樹
2
,
岸本 忠三
1
Toshio Hirano
1
,
Masaki Suemura
2
,
Tadamitsu Kishimoto
1
1大阪大学細胞工学センター
2大阪大学医学部第三内科
pp.8-15
発行日 1987年2月15日
Published Date 1987/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425904953
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生体の免疫系において重要な役割を担う分子の一つはいうまでもなく抗体である。抗体はウイルスや細菌感染に対して防御機能を発揮する一方,その産生異常は自己免疫疾患やアレルギーの発症を引き起こす。
抗体はよく知られているようにBリンパ球により産生され,Bリンパ球が抗体産生細胞へ増殖,分化するプロセスはTリンパ球により調節されている。Bリンパ球は骨髄の造血系幹細胞より発生,分化するが,幹細胞よりプレB細胞をへて成熟Bリンパ球へと分化する過程で,あらゆる抗原に対応しうるクローンの多様性,レパートリーが形成される。このプロセスはat randomに起こると考えられるから,当然自己の体成分に特異性をもつBリンパ球クローンも出現することになる。しかし正常な抗体産生においてはこれらのクローンが抗体産生細胞にまで増殖,分化することはほとんどない。しかしながら,正常の免疫応答機構になんらかの異常が生じた場合は,自己の成分に対する免疫応答が起こり,この結果,種々の自己免疫疾患が発生することになる。また,気管支喘息などの即時型アレルギーは,IgE抗体により引き起こされることはよく知られている。これらの免疫異常症の発症機序を解明するためには,正常な免疫応答がどのように調節されているか,どのような異常が自己抗体の産生につながるか,アレルギーを引き起こすIgE抗体産生は,どのように制御されているかという問題を解明する必要がある。
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