研究の想い出
教えを受けた方々のおもかげ
勝木 保次
1
1鶴見大学歯学部生理学
pp.252-262
発行日 1972年10月15日
Published Date 1972/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425902937
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研究の想い出を書けとの依頼であつたが既に何回か書いた事があるので,今更その蒸し返しをする気にもならなくて,少し趣向を変えてみようと考えた。というのも最近勝れた科学者の伝記を読むとしばしば勝れた科学者になるにはよき師につく事が一番よい方法であると述べられてある。直接弟子入りでなくとも若い間は単なる手伝い仕事でも後には大変役に立つ事があるものだとさえいう人がある。私も確かにその意見には賛成であり,研究室に入るにはまずそのスタッフをよく知る必要がある。今の時点でこの方面の研究が将来性があると考えたら,次にその研究室のスタッフについて知る事が大切である。
この様に考えた時,私は大変師に恵まれたと思わずにはいられない。師匠といえば現代的には古いといわれるかもしれない。私の若い時代であつたからかもしれないが,今だに橋田邦彦先生は私の研究生活の柱だつたと思えてならない。先生の御最期は悲壮であつた。私自身は召集されて熱帯のジャングルの中に終戦を迎え,1年近い捕虜生活を送つて帰国して初めて先生の最後を知つたので,詳細は先輩の書かれたものを読んで知つたわけだつたが,死をもつて責任をとられた事は日頃教えをうけた私たちには,そうするより他なかつた事がよくうなづける(第1図)。
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