特集 〈研究室で役に立つ細胞株〉
Ⅰ.上皮細胞株
血管内皮細胞
ヒト内皮:ECV 304
三井 洋司
1
1工業技術院微生物工業技術研究所
pp.413
発行日 1992年10月15日
Published Date 1992/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900415
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■樹立の経緯
ヒト臍帯の静脈血管から酵素法で分離した正常内皮細胞に由来する。樹立者は防衛医大の高橋ら1)である。意図的に樹立したわけではないが,形質転換している様子なのでその分離を行い,いくつかの目的すなわち,プラスミノーゲンアクチベーターの生産制御,糖タンパク生産用ホスト細胞などへの応用である。
樹立までの過程は,高僑らとのpcrsonal communicationによれば,まず最初は,ヒト臍帯静脈由来の正常内皮細胞を分離する目的で常法どおりに培養していた。継代数が比較的早い時期に,ビーズ上での培養を試みるために,単層培養の内皮細胞の上にビーズを加えたところ,ビーズに付着して増殖する細胞が出現した。継続してビーズ上で培養できるようになったこの細胞は,増殖様態が異なるため,変異細胞として意識的に分離したところ,通常の分裂寿命を持たない細胞株と認定したとのことである。ただし,このビーズ培養をその後何回も試みたが,細胞株の分離に至らなかったので,株細胞の樹立とビーズ培養に因果関係は必ずしも認められなかったという。したがって,この細胞株は,いわゆる自然形質転換によって株化(無限寿命化)したことがうかがえるが,再現性についてホットな討議がかわされた経緯がある。
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