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特集 神経系に作用する薬物マニュアル
Ⅲ.代謝的に作用する薬物
酵素活性に影響する薬物
アデニル酸シクラーゼ
Adenylate cyclase
夏苅 直己
1
Naoki Natsukari
1
1生理学研究所能動輸送部門
pp.452-456
発行日 1991年10月15日
Published Date 1991/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425900252
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「概説」
1.基本構造と活性制御機構
アデニル酸シクラーゼは細胞膜結合性の酵素で,基本的にホルモンや神経伝達物質など一次伝達物質の受容体(R),GTP結合蛋白質(G),これらに共役したカタリスト(C)から構成される(図1)。この酵素の活性化によってアデノシン三リン酸(ATP)は環状アデノシン一リン酸(cAMP)に変換され,cAMPは二次伝達物質としてcAMP依存性リン酸化酵素(A-kinase)を活性化する。このリン酸化により細胞内の様々な代謝活動が発現される。
RとGには促進性(Rs,Gs)と抑制性(Ri,Gi)成分があり,一次伝達物質刺激によるcAMPの生成をそれぞれ促進したり抑制したりする。Gはαβγの三量体から成る。脳には特異的にGoが存在する。αにも促進性αs(45/52kDa)と,抑制性αi(41 kDa)/αoがある。通常αにはグアニンヌクレオチドであるGDPが結合している(①)。β(35kDa),γ(5~10kDa)は,両方の系に共通である。RにアゴニストAが結合するとA-R-G複合体が形成されα上でGDP-GTP交換反応が行われる(②:律速段階)。この反応にMg2+は必須である。三量体形成時のRはAに対して高親和性の状態にある(R*)。GTPが結合するとαは活性化されβγとともにRから解離する。この時Rは低親和性状態(R)に戻る。αs-GTP,αi-GTPはそれぞれ酵素を活性化あるいは抑制する。
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