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特集 使える最新ケミカルバイオロジー
D.トピックス:細胞内温度計
蛍光性ポリマー温度センサー
Fluorescent polymeric thermometer
岡部 弘基
1,2
Okabe Kohki
1,2
1東京大学大学院薬学系研究科生体分析化学教室
2独立行政法人科学技術振興機構さきがけ
pp.163-168
発行日 2015年4月15日
Published Date 2015/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.2425200124
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細胞内部は,細胞小器官を含むあらゆる空間が高度に区画化された複雑な構造をとっており,その中で生体分子は不均一に分布して機能している。この各微小空間における温度,圧力や疎水場などといった物理量は,生体分子の状態や活性に強く影響する。このような細胞内の局所的な環境因子は,生体分子の状態や動態に大きな影響を与えることにより,各々の生体分子間の相互作用を制御している可能性がある。このため,細胞の機能を深く理解するためには,細胞内での生体分子の振る舞いやそれを支配する物理的因子の解明が不可欠である。
細胞内の微小空間内の分子に最も強い影響を与える環境因子は温度である。温度はあらゆる化学反応を支配する物理量であり,生体分子の動態や活性に与える影響の大きさは言うまでもない。また,温度と生物のかかわりは生物学の古典的テーマである1)。しかし,細胞内の局所空間における温度や,それと細胞機能の関連についてはこれまで一切不明であった。この原因は,細胞内部の温度計測技術がなかったためである。従来の温度測定法であるサーモグラフィや熱電対では細胞内部での測定に不向きであるうえに,極微小空間である細胞内では機能できない。
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