#総合診療
#書評:明日からの診療にきっと役立つ! 医学のトリビア—エビデンスに基づく患者さんからのシンプルな質問への答え方
山中 克郎
1,2
1諏訪中央病院総合診療科
2諏訪中央病院看護専門学校
pp.1183
発行日 2025年10月15日
Published Date 2025/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.218880510350101183
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本書は、まるで著者である上田剛士先生の診察室を訪ねたかのような一冊だ。患者から投げかけられる質問の多くは、生活に根ざした素朴な疑問である。例えば「おならがよく出て困る」「指を鳴らすと指が太くなるのか」「タマゴは1日1個までにすべきか」といった問いは、一見些細なことに思えるが、患者にとっては健康を左右する切実な関心である。こうした問いに対して、ユーモアを交えながら科学的根拠に基づいて明快に解説するユニークな本である。文献的な考察をせず、適当に答えていた自分の外来診療を反省した。
「寝る子は育つ」という昔ながらの言い伝えに対し、著者は睡眠が成長ホルモンの分泌を促すだけでなく、摂食行動とも関連することを紹介し、睡眠不足は食べ過ぎから肥満になりやすいと説明する。寝ない人は「横に」育つとの絶妙なオチに、思わず笑ってしまう。そこには医師としての深い探究心と、健康に対する真剣なまなざしが通っている。評者の場合は、田舎で診療していると、畑仕事で真っ黒に日焼けした元気な高齢者に出会うことが多い。隣の畑の世話をする友人とおしゃべりし、食事だけでは補えないビタミンDの不足分を日光浴で補っていたのか。さらに収穫の楽しみを得て、家族やご近所の人とその喜びを共有することが高齢者の生きがいになっているようだ、などと考えてしまう。

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